2025年7月17日?20日 、「RoboCup 2025」がブラジル?サルヴァドールにて開催され、九州工業大学大学院生命体工学研究科および北九州市立大学の学生が結成しているチーム「Hibikino-Musashi@Home」が@Homeリーグの標準機部門(DSPL)において優勝しました。この優勝は、昨年(2024年)に続く2年連続の快挙であり、同部門で通算4勝目となります。
RoboCupは自律移動型ロボットによる競技会であり、@Homeリーグはキッチンやリビングなど日常生活の場において、人間の生活を支援するロボットの開発を目標としたリーグです。Hibikino-Musashi@Homeはトヨタ自動車製の標準機(HSR)を使用するDSPLに出場し、世界の強豪チームを相手に再び優勝を勝ち取りました。
本競技会はStage I、Stage II、Finalの3つのステージから構成されており、今年度のDSPLは各国からブラジルへのロボットの輸出が困難な中4チームが参加しました。
ロボットの基本的な性能を評価するStage Iではすべてのタスクにおいてバランスよく点数を重ね、合計2004点を獲得しました。続くStage IIではレストランタスクを中心に点数を重ね、Stage IとIIとの合計3019点を獲得してFinalに進出しました。Finalでは、部屋のドアを開けたり、人間の言葉を理解して自律的に行動したりするタスクに挑み、1100点を獲得し、見事DSPLにて優勝を果たしました。
5月に滋賀ダイハツアリーナで開催されたRoboCup JapanOpen @Home DSPLでは、惜しくも2位という結果でしたが、Hibikino-Musashi@Homeはシステムの安定性や頑健性の向上に取り組み、本大会での優勝につなげることができました。
特に、人間による調整を極力減らし、どのような環境でも安定して動作するロボットシステムの構築を目指して、現実の部屋の家具情報をシミュレータ上に再現する技術や、物体の収納位置を推定するシステムの開発に取り組みました。また、レザバー計算 をロボットに応用し、室内にいる人物を見つけるためのジェスチャー認識機能や、環境のノイズをその場で学習して騒音環境下でも人物の発話タイミングを推定できる発話区間検出機能を取り入れました。
Hibikino-Musashi@Home 概要
Hibikino-Musashi@Home(主指導教員: 大学院生命体工学研究科 田向権 教授、副指導教員: 同研究科 田中悠一朗 准教授)は「人間と共存可能な家庭用サービスロボットの実現」を目標に、ロボットの開発に取り組んでいる学生プロジェクトのチームです。画像認識や行動生成などの人工知能開発を中心に、ロボットハードウェアの設計や制御など幅広い工学分野の知識を集結して開発に取り組んでいます。
また、ニューロモルフィックAIハードウェア研究センターにおける分野横断の研究開発が、ロボット応用の実装へ結びつき、日々その性能を進歩させています。さらに、経済産業省および新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する、国内の生成AIの開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」のもと、東京大学やトヨタ自動車などと連携し、ロボットが自ら状況を判断し行動を生成する、ロボット基盤モデルの構築にも取り組んでいます。
【世界大会】RoboCup | 開催国 | 結果 |
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RoboCup 2025 | ブラジル | 優勝 |
RoboCup 2024 | オランダ | 優勝 |
RoboCup 2023 | フランス | 準優勝 |
RoboCup 2022 | タイ | 3位入賞 |
RoboCup 2021 | オンライン | 準優勝 |
RoboCup 2020 | 中止 | - |
RoboCup 2019 | オーストラリア | 3位入賞 |
RoboCup 2018 | カナダ | 優勝 |
RoboCup 2017 | 日本 | 優勝 |
◇上記ほか、日本大会を含むすべてのHibikino-Musashi@Homeの成績はこちら。
九工大はNEDOの研究開発プロジェクト「高効率?高速処理を可能とするAIチップ?次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/ニューロモルフィックダイナミクスに基づく超低電力エッジAIチップの研究開発とその応用展開」(JPNP16007)に参画しており、レザバー計算の専用チップの開発やサービスロボット等への応用探索を推進しています。また、九工大では同窓会である明専会や企業と連携し、学生グループによる創造的なプロジェクトに対し、その活動を強力にサポートしています
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◇Hibikino-Musashi@Home公式ウェブサイトはこちら。
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◇ニューロモルフィックAIハードウェア研究センターについてはこちら。